「ない」

「ん?どした?」

「ない!」

「だから何がないんだよ」

「俺のプリン!」

「は?」

「ほら、こないだここ来たときに俺置いてったじゃん!期間限定の焼きプリン!」

「あー……そだっけ?」

「携帯ばっか触ってないで話聞けよ!」

「おー……」

「聞いてないだろ!あ!」

「今度はどうした?見つけたか?」

「……あぁ見つけたよ」

「なら良かったじゃねえか」

「ゴミだけどね。しかも、明らかに食ってすぐあと、って感じの」

「あー、あの甘ったるいプリンね。風呂上がりに丁度良いからさっき食ったわ」

「お前さいてー!俺だって風呂上がりに食おうと思って置いてったのに!」

「自分の部屋の冷蔵庫に入れときゃ良かっただろ」

「だめだめ。ヨシが食っちゃうもん」

(……またヨシか)

「ヨシって見た目に合わずに甘党だからね」

(そんな嬉しそうな顔で話すなよ。嫌そうな口ぶりとちがって幸せな顔してる)

「だからお前んとこなら安全だと思ったのにさ。ほら、お前甘いもん苦手じゃん?」

(確かにあれは甘すぎた。まだ口の中が甘い気がする)

「あー……甘いもん食いたー……い」

「あ……甘いもんあるよ」

「マジ!どこどこ……」

「ここ」

チュッ

「ッ!バカ!何すんだよ!」

(そんな嫌そうに唇擦るなよ。少し傷つく)

「もう俺、部屋帰る!」

(ヨシがいるから?)

「お邪魔しましたあ!」

「待った待った。クレープやるから許せよ、な?」

「クレープ?……どこの?俺あの店のクレープしか食わないよ」

(意固地になってんな。多少顔赤いのに)

「ほら、これだろ?」

「嘘!すげぇ!お前マジすげぇ!なんであんの!?」

「お前がこの前バカみたいに顔緩めて食ってたから」

「バカは余計だけど、マジさんきゅーな!」

「ん、プリン食って悪かったな」

「いいって、いいって!このクレープのが好きだもん」

(甘いもので簡単に釣れて、キスのことも忘れるからバカなんだって)
(でも、そうやってコイツを部屋に帰そうとしない俺も十分バカ、か)





馬鹿と何とかは紙一重

(2007.08.04)